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しびれた様な痛みとか凍るような痛みとか
歯の痛みを訴える時、なんて言ったらいいのか分からない事って多くないですか? 「何だか奥のほうがズキズキ・・・・」 「兎に角、めっちゃ痛い・・」 「ズーンと重いような感じ・・・・」 うーーん。貧困なボキャブラリーでの訴えは診断の糧になかなかなってくれません。 「日本の場合、痛みを表す言葉としては「ちくちく」「ずきずき」「しくしく」といった擬音によるくり返し言葉がよく使われます。これに対し英語ではpulsing,beating,drilingなど、その刺激の状態や刺激を与える物を具体的に表した言葉が多く使われています。」 御存じのように夏目漱石のお陰で日本は「口語」という表現方法が発展しました。 自分の気持ちを言葉で表すという、今では当たり前のことが明治期に入るまで出来なかったというか無かったのです。 しかも我慢することが美徳とされる文化的背景の中「痛み」の表現方法が豊富である可能性は・・・・。 文化という観点から言えば多民族国家であるアメリカが「痛み」の表現をいろいろな工夫を凝らして文章にするというのは必要から生まれてきたことかと・・・。 「McGill(マクギル)痛み質問票:MPQ(McGill Pain Questionnaire)」 http://toutsu.jp/pain/method.html 上のサイトにもありますがマクギルの質問票の痛みを表現する形容詞は全部で78個! これを日本語に訳す際に大変苦労したということが書いてありました。 http://app.m-cocolog.jp/t/typecast/24875/26560/50128652 いずれにせよ痛みを分析する際には痛みの表現方法の規格化、痛みの度合いの定量化みたいなステップが必要になります。 視覚的評価スケール:VAS(Visual Analog Scale)とかでどのくらい痛いかを定量化する方法は有名ですが、痛みの表現方法っていうのは「コトバ」という大きな壁があるのでおいそれと簡単にはいきません。 痛みの訴えを聞く側としては集中して耳を傾けることしかできません。訴える側は痛みのある中では難しいですが冷静に痛みを分析して説明することが大事かもしれません。 フランス語圏で関西のおばちゃんが「水ちょうだい!水!」と身振り手振りで訴えかけてホテルのフランス人が手渡したエビアン・・・・これが万国共通の「コトバ」だと思います。 ただこの「コトバ」だけでは説明しきれない類の「痛み」があります。それこそマクギルの分類を学習して分類しないといけないような。さらには地域による方言の違いなどから生まれる表現方法などがそれをさらに複雑に・・・・。 そんな人文科学的な捉え方がまだまだ多いに役立つほどに「痛み」の理解は難しい・・。そんな中、「歯が原因ではないのに歯の痛みに感じてしまう疼痛」の種類分け・・・・これが大事だと思うことが日常臨床ではよくあります。 次回は、まるまま引用しながら「非歯原性疼痛」についてまとめておきます。
象牙質の虫歯も結局同じ
今夜は象牙質の虫歯について。 その前に象牙質は上の断面図にあるようにエナメル質の直下、歯髄(歯の神経)までの間を満たす骨くらいの堅さを持った歯の構成成分。 それはコラーゲン繊維によって強化された硬質粘土のようなもの。その構造は、日干し煉瓦を作る時、粘土に藁を入れて強化するのと似た仕組み・・・・エナメル質ほどでは無くとも堅く、かつ弾力性もあるその構造は知れば知るほど素晴らしい。 しかし、この魅力ある構築物は一度、直上にあるエナメル質がカリエスにより欠損した途端にもろさを露呈してしまいます。 無機質が7割を占めていますがコラーゲン線維を2割、水分を1割という構成比率は96パーセントが無機質のエナメル質に比べると「柔らかそう・・」ということになります。 ただ、象牙質も嫌気条件下でないと脱灰は起こりにくいと考えます。 例えば歯冠形成を終えた歯牙の露出象牙質部分がいつも脱灰しているでしょうか? ブラッシングがある程度できてプラークの堆積がない場合などは特に感じるのですが修復物脱離直下の象牙質の腐食に比べると・・・・全く腐食が見られないケースが多いような。 逆にエナメル質のう蝕を放置して象牙質に至る、いわゆるC2の虫歯というのはその構造上象牙質表層が嫌気性下になりやすいことが腐食進行の大きな原因と言えないでしょうか? 象牙質カリエスが加水分解反応によるものというのが通説と認識しています。ただ加水分解されるのは象牙質の中のコラーゲン線維であり露出象牙質といえども無機質成分であるハイドロキシアパタイトの取り巻きという守り役が存在します。 結局、加水分解の前に無機質成分の溶解(腐食)で守り役がやられてしまうという前提があるはずです。 結局はエナメル質の腐食と作用機序は同じで要は有機質の構成成分の違いで加水分解が取り出されているにすぎないのでは? 微生物の存在下における乳酸やリン酸の放出によるハイドロキシアパタイトの脱灰というのがう蝕の最たる要因ならば露出象牙質は押し並べてカリエスになっているべきだと考えられないかなぁ。 臨床で見られる様々な状態の歯牙を観察するにあたり、理解し難い現象を目の当たりにすることが多い。 理解し難い現象というのは微生物の産生する酸による歯牙の溶解という公式が当てはまらない事例のことです。 以上、「虫歯について」をエナメル質編と象牙質編にわけて書いてみました。 次回のお題目は「痛み」について。 日本の歯医者さんは歯学部歯学科、アメリカは医学部歯学科・・・・。「痛み」に関する捉え方の違いひとつとってもこの経歴だけでも大差があります。 身体を診るか、歯を診るか?大げさに言えばそのくらい遅れている分野かもしれませんね。
閑話休題
今日はちょっと休憩。 先日読んだ本の紹介。友人から勧められて読みましたが良かった。 ミステリー小説は一旦嵌ると途中でやめられない面白さが病みつきになりますが、本書は科学界のミステリー本なので面白さは倍増します。 生物と無生物のあいだ DNAのお話など平易にかつ楽しく紹介されているます。 研究者がカッコいいと思えるのもめったになく気に入っています。 閑話休題、次回はカリエスの話に。
エナメル質カリエスと微生物腐食
今日は随分と寒い日で何だか調子が狂います。 折角の春爛漫の気分が台無しです。 さて本日のお題目は「微生物腐食とバイオフィルム」です。 昨日の電位とかpHの話はこの中に出てきます。電位差も水素イオン指数(pH)も酸化還元反応に大いに関係するので当然です。 以下の引用はhttp://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0100060090 からのものです。 微生物腐食とは・・・・ 微生物腐食とは,金属材料が微生物の存在下で,直接的あるいは間接的な影響を受け,激しい腐食を受ける現象である。古くから土壌環境における嫌気性菌である硫酸塩還元菌(SRB)による炭素鋼の腐食がよく知られており,腐食生成物として硫化鉄が検出される。また,最近はステンレス鋼の海水および河川水のような淡水中における好気性菌による局部腐食も注目されている。 そもそも腐食現象は金属材料と環境との相互作用であり,その使用される環境が自然環境である限り,地球上の物質循環と密接にかかわっている微生物の活動の影響を受けることは十分予想される。微生物は地球上の多くの環境中に生育し,条件が満たされれば増殖し,周囲環境の変化をもたらし,金属を腐食させる場合がある。微生物の生育は高等動物に比して広範囲の環境で満足され,水さえあれば生育すると言っても過言でない。材料的には,炭素鋼,低合金鋼,ステンレス鋼,アルミ合金,銅合金,高ニッケル合金等で微生物腐食が経験され,それらからなる構造物や機器に影響を与えている 長めの引用でしたが。。。錆に代表される腐食生成物生成の要因として微生物の存在が関係している場合があるというだけの話です。 そして微生物の仲介が実際どのように行われているのかは以下のリンクを参考に http://www.biochemeng.bio.titech.ac.jp/research/biofilm/cathodic%20protection/cathodic%20protection.html 大事なのは・・・バイオフィルム内の溶存酸素 (DO) 濃度を測定すると,金属表面に好気的な領域と嫌気的な領域が偏在する・・・ということ。 結果・・・同一の金属表面に酸素濃度の異なる領域が存在すると「通気差腐食」が進行します。通気差腐食の特徴は鉄の溶出(腐食)が嫌気的領域において局部的に生じる点にあり,一旦局部腐食が開始されると,その個所はさらに酸素の供給が減少することから腐食が促進され孔食が進みます。従って,バイオフィルムの中で生物活性が高い箇所が選択的に腐食する 上の現象をエナメル質の虫歯の成り立ちに当てはめると出来上がり。 バイオフィルムによって生じたearobicな個所とunearobicな個所とが出来ることで生まれる通気差腐食がエナメル質に孔を穿つ要因だとかんがえられないか? 通気差腐食=鉄だけで、他の金属と接していない場合でも、部分的に酸素の供給量に差があると腐食電池を構成することになります。例えば水の中に鉄を入れて、その一部が空気中に露出している場合は水面のすぐ下で腐食が進行します。これを通気差腐食といいます。http://cache.yahoofs.jp/search/cache?c=BDGjzMFZoqwJ&p=%E9%80%9A%E6%B0%97%E5%B7%AE%E8%85%90%E9%A3%9F&u=homepage3.nifty.com%2Fchernobyl%2Fryuukai.html 引用が多すぎて読み辛い感じになったので今日はここまでです。 まとめとしてはバイオフィルムという仲介者のふるまいの仕方で随分と歯表面で起こる現象が違って見えてくるというところでしょうか。 ミュータンス菌がわんさか酸を出してエナメル質を溶解する絵というのはバイオフィルムの存在が言われる以前からあった話です。 細菌学の世界ではバイオフィルムが言われてからそれまでと見方が変わったと言われます。 次回は象牙質の虫歯の話を絡めてみます。
バイオフィルムについて
今日はバイオフィルムの話になります。 画像はネットで引っ張ってきたので著作権が気になりますが、図のへばりついた汚れみたいなのがバイオフィルム。 バイオフィルムとは・・・・ 正確にはバイオフィルム(生物膜)としてよく知られているが、スライム(ねと)シティは水があるところならどこでも、台所でも、コンタクトレンズでも、動物の腸管ライニングにも、はびこっていく。そのシティが郊外へどんどん伸びていけば.バイオフィルは肉眼で見ることができるようになり、水道管の内部をコーティングしたり、あるいは鉛管設備からつるつるして緑色にぶら下がってくる。”(Coghlan 1996) では口腔バイオフィルムは・・・ 口腔内微生物によって固相面を足場に、膜状に構成されるバイオフィルム (微生物により形成される構造体)のこと。 イメージは川の石の上のぬるぬるしたスライム、花を1週間いけておいた花瓶の内部のゲル上の薄膜などである。(http://www.edstrom.co.jp/resources/water_biofilm.htmより引用。) 今回はバイオフィルムを徹底的に除去しましょうという話ではありません。 すべての細菌の99%以上はバイオフィルム社会に住んでいる。なので口腔バイオフィルムも他の分野を参考にして考えてみれば結構分かりやすいのです。 「バイオフィルムの中の細菌が酸を産生してエナメル質を溶解し虫歯をつくる?」 この辺りで「錆」の話に戻ってみましょう。 昨日の話であったように錆は鉄以外では「腐食生成物」と呼ぶそうです。腐食のメカニズムが酸化還元反応だという話もありました。 そして酸化還元反応が電位とpHに依存することも。 ならばバイオフィルムそのものが酸化還元反応の手助けとなることで腐食生成物が作られるとう観点、つまりバイオフィルムと電位とpHの関係から虫歯の成り立ちを考えていってみましょう。 つづく
酸化して錆びてしまう口の中!?
昨日の続きです。 しばらく堅い話になりますのでさらりと読まれたい方はスタッフブログをご覧ください。 さて「酸化する」のがポイントという話でした。 「人間は生きているだけで酸化します。」そんな謳い文句で抗酸化作用のある食品をおススメするわけではありません。 でも身体が錆びる・・・・そんな言い方は当たらずとも遠からず。 錆とは・・・・ 一般的には、金属の腐食生成物を「錆」と呼ぶ。しかし、専門的には(特に腐食防食工学では)、鉄や鉄合金の腐食生成物のみを「錆」「鉄錆」と呼び、鉄以外の金属では錆とは呼ばずに単に腐食生成物と呼ぶ。 さらに 錆は、酸化還元反応により鉄表面が電子を失ってイオン化し、鉄表面から脱落して行くことで進行する。電気化学的な反応なので、錆が発生するかどうかは電位と pH に依存する。 「錆びる=酸化還元反応」なので電位とpHが問題になるわけです。 酸化する時は必ず還元される側があるので口の中が酸化するという言い方は「酸化還元反応が起こっている=錆びている」と言いかえられます。 さて放っておいたらどんどん腐食してゆく口の中をどうやって整えるか?というか整えるとはどうすることなのでしょう? デンタルプラーク(いわゆる歯垢)を隅々まで除去すること? そうすれば虫歯菌の出す酸から歯を守れる!! いっそのこと虫歯菌をみんな除去すれば? いやいや虫歯菌の食料であるショ糖を無くせば? その前に虫歯の成り立ちを考えてゆきましょう。 キーワードは「バイオフィルム」です。 つづく
院長ブログです
こんばんわ。ようやく院長ブログとスタッフブログが別個になりました。 二つのブログ内容は趣を変えて再出発しようと思います。よろしくお願いします。 さて、今回取り上げるのは「虫歯について」です。 以下、ウィキペディアより抜粋 飲食とう蝕 [編集] 飲食の直後は、口腔内の細菌が糖分から酸を作り出して歯垢のpHが低下する。平常時は平均的にpH6.8だが、飲食によりpH4~6に急低下し、その後ゆっくり1時間くらいの間に回復する[27]。これにより歯の脱灰が進む臨界pHを超えると歯のエナメル質が脱灰され溶けはじめる。臨界pHは、一般にpH5.5以下であるといわれているが、歯の石灰化度によっても変化する。たとえば、歯の石灰化度が永久歯よりも低い乳歯では、これより高いpHでも脱灰が進む。ステファンカーブというグラフで知られているが、砂糖水でうがいをした2~3分後に、最もpH値が下がり酸性に傾く。これが唾液などの働きにより、アルカリ性のほうへpHが上昇していき、一定のpH以上となったときに逆に再石灰化するようになる。一般的には再石灰化まで数十分かかる。 飲食後、口の中は酸性に!→この酸性という環境が虫歯の要因になりますよ! 簡単に言えばそんなところ。その中で砂糖の摂取量云々の問題もありますが今の日本の社会で砂糖の摂取制限を毎日続けるのは不可能でしょう。 それよりもphの回復に一時間くらいかかるところがポイントです。 回復時間は唾液の分泌量や緩衝能などにもよるでしょうが、兎に角時間がかかる。そうした中で「間食」がどんなにか虫歯のリスクが高いことか! ブラッシングと砂糖の摂取を気をつけていても、酸性環境という荒波の中では虫歯のリスクは減らせません。 「酸化してしまう」これが虫歯のキーワードです。 これって虫歯に限らずですね。
HP暫定完成?
こんばんわ。院長の黒住です。 お気づきのようにようやくHPが形になってきました。まだまだ修正していきますが、あんまり派手でカッコいい感じにする予定はありません。 活きている感じをどうやって出すのかというのがポイントですがスタッフと共に思案しながら「カタチ」にしていきたいと考えています。 今後HPからの情報発信が皆さまの役に立てれば幸いです。お付き合いのほどよろしくお願いいたします
デンタルフロスのすすめ
こんばんわ。昔と違って口腔ケアに関心が高まる昨今。 睡眠前のブラッシングに長い時間を費やしている~そういった方も多いです。 最近は虫歯の数も減ってきているだけでなく、歯ブラシをすることが好きだという患者さんに出会うことも多いです。 でもデンタルフロスの使用頻度って。。。。 実際、難しいので是非ともお声をかけてください。 歯科衛生士をはじめとしてスタッフがお手伝いいたします。 歯の間から出てくる汚れを目の当たりにすると。。。。。ブラッシング好きの方もそうでない方もぜひぜひ。
子供の虫歯
子供の虫歯を防ぐためにはどうすればいいですか?という質問をよくされます。 ・食事の回数は一日3回、間食は一回。 ・食後、10分以内の歯磨き。間食後も忘れずに。 ・小さいお子さんは仕上げ磨きを忘れずに。 ・あまり泡立たない歯磨き粉の方が液だれすることなく、長い時間歯磨き出来るので おススメです。 ・食事は就寝時間の2時間前までに終える。 ・定期的な検診 乳歯の虫歯は永久歯の歯並びに悪影響を及ぼすことがあります。お子さんの歯を守ってあげてくださいね。 スタッフより